位牌は、故人の霊魂が宿る場所としてご自宅の仏壇に安置される大切なものです。位牌には戒名や没年月日などを記す必要がありますが、宗派によって戒名のつけ方やレイアウトが異なる点には注意が必要です。
今回は、東京浅草にある滝田商店が位牌の戒名について宗派ごとに紹介していきます。しっかりと違いを理解して、正しく位牌をつくっていきましょう。
天台宗
天台宗の教え
天台宗は、「妙法蓮華経(法華経)こそ仏陀の教えの究極を説いたもの」としています。
この法華経を中心に、菩薩戒・顕教・密教・禅法などを融合した総合仏教です。これを「四宗相承」といい、円・密・禅・戒、念仏を法華経の精神で統合していこうというものです。
そして、すべての人、生物、存在は仏になれると説いています。天台宗宗憲には「天台宗は宗祖大師立教開示の本義に基づいて、円教、密教、禅法、戒法、念仏等いずれも法華一乗の教意をもって融合しこれを実践する」とあります。
天台宗の戒名の特徴

天台宗の場合、戒名の構成は院号(院殿号)・道号・戒名・位号の順となります。
戒名の上に大日如来を表す「ア」という梵字を記載することがありますが、本位牌をつくる際は省く方が多いようです。また、阿弥陀如来を表す「キリーク」の梵字を入れることもあります。
真言宗
真言宗の教え
真言宗は真言密教とも言い、「即身成仏」を教えの根幹にしています。これは密教の修行の実践により、誰でもただちに仏になることができるという教えです。
密教の修行とは、身体の修行である身密、言葉の修行である口密、心の修行である意密で、あわせて「身口意の三密修行」と呼ばれています。
真言宗の戒名の特徴

真言宗の場合、戒名の構成は梵字・院号(院殿号)・道号・戒名・位号の順となります。
戒名の上部に「ア」の梵字と下部に「位」を入れるのが一般的です。「ア字の梵字」を記して大日如来の仏弟子となったことをあらわします。
子どもの位牌をつくるときは、戒名に地蔵菩薩の意味を持つ「カ」の梵字を入れます。
浄土宗
浄土宗の教え
浄土宗は、阿弥陀如来が西方十万億土の彼方につくられた、浄らかな極楽浄土に往生することを説く教えです。極楽浄土に往生し、そこで阿弥陀如来の説法を聞いて仏になるのです。
極楽浄土に往生するためには、阿弥陀如来の救いを信じて「南無阿弥陀仏」と唱えることが大切だと、法然上人は教えています。阿弥陀如来の救いを信じて南無阿弥陀仏を唱えていると心も体も清らかになり、人生を心豊かに生きぬき、死後浄土に生まれて仏さまになることができるのです。
浄土に生まれればいつまでも浄土に居られるのですが、仏さまとしてこの世に帰ってきて、まだ救われない人々を救うこともできるというのが、浄土宗の教えです。
浄土宗の戒名の特徴

浄土宗の場合、戒名の構成は院号(院殿号)・誉号・戒名・位号の順となります。念仏の教えを受けた証として「誉号(よごう)」をつける点が特徴です。お寺によりますが、院号の下に道号をつけることもあります。
阿弥陀如来を表す「キリーク」の梵字を入れる場合もあります。
浄土真宗本願寺派
浄土真宗本願寺派の教え
浄土真宗では、阿弥陀如来を信仰して「南無阿弥陀仏」の念仏を称えれば、必ず極楽浄土に往生できると説いています。
仏さまになるには「修行によって煩悩を断ち切り、善根を積むことが必要である」とされてきました。しかし、今の私たちにとって、それを毎日続けてゆくのは難しいことなのではないでしょうか。
そこで、阿弥陀如来は私達のような者を救おうと誓い、浄土を建立しました。この、阿弥陀如来が建立した浄土に生まれる道を説くのが、浄土真宗の教えです。
また、浄土真宗では、「阿弥陀如来に帰依すると決めた時点で、誰でも仏になることが約束される」としています。そのため、阿弥陀如来に帰依したあとの念仏は仏になるために唱えるのではなく、仏になれた感謝の表現として唱えるものとされています。
自分の修行などによって極楽浄土へ往生しようとする「自力念仏」ではなく、阿弥陀如来を信じ感謝の心とともに唱える「他力念仏」が、浄土真宗の念仏です。
浄土真宗本願寺派の戒名の特徴

浄土真宗の場合、戒名の構成は院号(院殿号)・釈(釋)号・法名の順です。法名の上に「釈(釋)号(しゃくごう)」をつけます。釈をつけるのはお釈迦様の弟子になるという意味です。
なお本来、「亡くなった時点で成仏する」という教えの浄土真宗では、位牌を用いることはありませんでした。しかし、近年は故人を近くに感じたいと考え、宗派の考えに関係なく位牌をつくる方が増えてきています。
真宗大谷派
真宗大谷派の教え
仏さまになるには、修行によって煩悩を断ち切り、善根を積むことが必要である、とされてきました。しかし、今の私達にとって、それを毎日続けてゆくのは非常に難しいことなのではないでしょうか。
そこで、阿弥陀如来は私達のような者を救おうと誓い、浄土を建立したのです。この、阿弥陀如来の建立した浄土に生まれる道を説くのが浄土真宗の教えです。阿弥陀如来は私達のような者こそを、救いの対象にしているのだと説いているのです。
また、浄土真宗では、「阿弥陀如来に帰依すると決めた時点で、誰でも仏になることが約束される」としています。ですから、阿弥陀如来に帰依した後の念仏は仏になるために唱えるのではなく、仏になれた感謝の表現として唱えるものなのです。
自分の修行などによって極楽浄土へ往生しようとする「自力念仏」ではなく、阿弥陀如来を信じ感謝の心とともに唱える「他力念仏」が浄土真宗の念仏なのです。
真宗大谷派の戒名の特徴

浄土真宗の場合、戒名の構成は院号(院殿号)・釈(釋)号・法名の順です。法名の上に「釈(釋)号(しゃくごう)」をつけます。釈をつけるのはお釈迦様の弟子になるという意味です。
なお本来、「亡くなった時点で成仏する」という教えの浄土真宗では、位牌を用いることはありませんでした。しかし、近年は故人を近くに感じたいと考え、宗派の考えに関係なく位牌をつくる方が増えてきています。
臨済宗
臨済宗の教え
臨済宗の教えは、「人間が生まれながらに、だれもがそなえている厳粛で純粋な人間性をみずから悟ることによって、仏と寸分も違わぬ人間の尊さを把握する」というものです。もちろん禅宗ですから、もっとも重視しているのは坐禅です。
臨済宗の禅は「看話禅」と呼ばれ、師匠が「公案」という問題を出します。弟子はこれを頭だけで理論的に考えるのではなく、身体全体で、理論を越えたところに答えを見いだします。そして、この結果を検証するのが参禅です。 師匠と二人きりで対面した弟子が見解を提示し、これを師匠が確かめるのです。
臨済宗の戒名の特徴

臨済宗の場合、戒名の構成は院号(院殿号)・道号・戒名・位号の順です。臨済宗の冠文字は「空」ですが、本位牌に入れない方がほとんどです。ご先祖様の位牌がある場合は、それにあわせるとよいでしょう。
白木の位牌には「現世の勤めを終えて仏の世界に帰る」ことを意味する「新帰元(しんきげん)」という文字が記されていますが、本位牌には入れません。
曹洞宗
曹洞宗の教え
曹洞宗における修行の基本は、坐禅です。修行は坐禅だけには限りませんが、ただひたすらに坐禅を行うこと(只管打坐)をもっとも重要に考えます。そして、坐禅の心とすがたで、日常生活を生きてゆく(即心是仏)ことを説きます。
坐禅の力は、必ず個人生活・社会生活に現れるので、坐禅と日常生活はひとつ(禅戒一如)なのです。
そのため、日常生活を大切にして、今ここで生きているかけがえのない命を事実のままに生きることこそが修行であり、この自己の修行がそのまま仏の行であると教えています。
壁に向かって禅を組む「面壁坐禅(めんぺきざぜん)」や、黙ってひたすらに坐禅を組む「黙照禅(もくしょうぜん)」といった坐禅への取り組み方が特徴的です。
曹洞宗の戒名の特徴

曹洞宗の場合、戒名の構成は院号(院殿号)・道号・戒名・位号の順です。曹洞宗の冠文字は「空」ですが、本位牌に入れない方がほとんどなので、ご先祖様の位牌にあわせるとよいでしょう。
白木の位牌には、戒名の上に「新帰元(しんきげん)」や「円寂・新円寂・帰元・新帰寂」などの文字が記される場合がありますが、こちらも本位牌には入れません。
日蓮宗
日蓮宗の教え
主だった日本仏教各宗派の中で、日本人宗祖の名前を冠して宗派名にしているのは日蓮宗だけです。それだけ、宗祖日蓮聖人の存在意義が教義に大きく反映しているのでしょう。
日蓮宗ではお釈迦さまの説かれた教えの中でも「法華経」こそが、世の中を救う絶対最高の教えであるとします。実際に歴史上に存在されたお釈迦さまは、「久遠実成の本仏」が自身を表した姿だとされています。
久遠実成の本仏とは、永遠の昔に悟りを開いた仏さまという意味で、法華経も本仏が経典として実態を示したものです。法華経を日本に広宣流布した日蓮聖人の教説を通して法華経を理解し、実践してゆくのが日蓮宗です。
法華経は本仏の声そのものであり、法華経の功徳すべてが「南無妙法蓮華経」の七文字にこめられていると日蓮聖人は考えました。そのため、「法華経の内容をすべて信じ帰依する」という意味の「南無妙法蓮華経」を唱えることを、何よりも重要な修行としています。
日蓮宗の戒名の特徴

日蓮宗の場合、「日号」をつける場合があり、戒名の構成は院号(院殿号)・戒名・日号・位号の順です。宗祖の日蓮にちなんだ法号が与えられる点が特徴的で、「日」の文字が使われます。
日蓮宗の冠文字は「妙法」で、本位牌にも入れる方が多い傾向にあります。希望しない場合は、無理して入れる必要はありません。ご先祖様の位牌がある場合は、それにあわせるとよいでしょう。
宗派別位牌のつくりかたは専門家に相談しましょう
位牌をつくるときは、宗派別のルールにのっとって戒名を記したりレイアウトを考えたりしなければいけません。あとからつくり直すことがないように、各宗派における注意点を確認しておきましょう。
この記事で紹介した戒名の特徴は一例であり、お寺の考えや地域の習慣によって異なることもあります。ひとつの参考にしつつ、お寺に確認しながら位牌をつくりましょう。
東京浅草の仏壇屋 滝田商店では、さまざまな宗派に適した位牌のご提案を承っております。位牌や戒名のことでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
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