位牌には、ご先祖様や故人の霊魂が宿ると考えられています。亡くなった方の象徴ともいえる位牌は、正しく選ぶことが重要です。
とはいえ、位牌を用意する機会はそう多くないため、どのようなものを選ぶべきかを知らない方は多いことでしょう。今回は、東京浅草にある滝田商店が位牌の種類と選び方を説明します。
ともにかけがえのない時間を過ごした大切な方にふさわしい位牌を選ぶためにも、ぜひこの記事を参考にしてみてくださいね。
位牌の種類
位牌には、大きく分けると4つの種類があります。
- 塗り位牌
- 唐木位牌
- モダン位牌
- 回出位牌
まずは、各位牌の違いについてみていきましょう。
塗り位牌
塗り位牌は、もっとも一般に普及している位牌の種類です。ヒノキやヒバなどに漆塗りを施した位牌で、金箔や金粉などで装飾された厳かなデザインが特徴的です。
従来、塗り位牌は会津、名古屋、和歌山などで作られてきました。しかし、最近は中国製の位牌も数多く販売されているため、購入する際は注意が必要です。海外製の塗り位牌はリーズナブルですが、日本製のものと比べると品質が劣る場合があります。
唐木位牌
唐木位牌は、高級銘木の黒檀や紫檀などを使用した位牌の種類です。上品かつ精巧に作り上げられており、木目のぬくもりを感じられる落ち着いた雰囲気に仕上げられています。
黒檀は、インドネシアが主な原産地のカキノキ科の木材です。材質は堅く水に沈むほど緻密で、耐久性に優れ、虫や菌に侵されにくいという特徴があります。綺麗に磨き上げることで高級感のある黒の光沢がひときわ目立ちます。高価な木材なので、「木のダイヤモンド」と呼ばれることもあります。
紫檀は、ラオス、タイ、ベトナムなどが主な原産地のマメ科の木材です。紫というよりも赤茶色に近い色をしていて、材質が堅くて緻密なところは黒檀と同様です。綺麗に磨き上げることで気品のある美しさが目立ちます。正倉院御物の唐木細工のなかではもっとも多くみられ、古くから珍重された木材です。
これらの銘木は、過剰な伐採を抑制するために国際的に保護されています。加えて、木材として使用できる大きさに成長するまでに長い期間を要するので、非常に希少価値が高いとされています。
モダン位牌
モダン位牌は、伝統的な位牌の素材や形式にとらわれない、自由なデザインの位牌です。
近年、ライフスタイルの多様化や住環境の変化により、家具のようにおしゃれな仏壇を選ぶ方が増えてきました。それにともない、位牌もシンプルなものやデザイン性の高いものが選ばれるようになってきています。
モダン位牌には制約がないので、材質やデザイン、大きさのバリエーションは多岐にわたります。天然石を使ったものや手のひらサイズのもの、横書きモデルなど、洋室やインテリアにこだわった部屋にも安置しやすいデザインが特徴的です。
位牌には、宗派ごとの細かい決まりがありません。故人の個性にぴったりなモダン位牌を選ぶことで、より大切な方を身近に感じられるようになるでしょう。
回出位牌
回出位牌 (くりだしいはい)は、台座に戒名を記す札板が8〜10枚くらい入る箱が付属している位牌です。「繰出位牌」と書くこともあります。
仏壇内がご先祖様の位牌でいっぱいになったときは、回出位牌を使えば位牌をまとめて納めることが可能です。札板はご命日の順に入れておき、表にきている故人のご命日を迎えたあとは札板を回し、次にご命日を迎える故人の札が表にくるようにして使います。
屋根や扉が付いている派手な形のものや、屋根や扉がないすっきりした箱型のものなど、さまざまなデザインの回出位牌があります。一番前の札板には、「○○家先祖代々之霊位」という文字を入れることが一般的です。
位牌の選び方
位牌にはさまざまなサイズやデザインのものがあるので、選ぶときに悩んでしまう方は多いかもしれません。
そこで、ここからは位牌の選び方について説明します。意識したいポイントは、以下の5つです。
位牌は故人にふさわしいものを
位牌は、「故人そのもの」であると考えられています。そのため、故人を想起させるような、その方らしい色やデザインのものを選ぶとよいでしょう。
ご紹介したとおり、位牌には漆を塗り金箔や金粉などで飾った「塗り位牌」と、黒檀や紫檀などで作られた「唐木位牌」があります。また、台座のあしらいには春日型や猫丸型、葵型などさまざまなバリエーションがあります。
なお、位牌の形やデザインには宗派や男女年齢による違いはないので、お好みのデザインを選ぶことができます。すでにご先祖様の位牌がある場合は同じ形で揃えることもありますが、何よりも大切なのは、故人にふさわしいものを選ぶことです。
仏壇のサイズに合わせて大きさを選ぶ
位牌の大きさは、仏壇の内部の作りに合わせて選ぶことが大切です。
初めて位牌をつくる場合は、仏壇に入らなくなることがないよう、先に安置する仏壇を決めてから位牌の大きさを考えたほうがよいでしょう。仏壇とのバランスが合っていないと、安置場所に困ったり見栄えが悪くなったりしてしまいます。
位牌の寸法は、戒名を記す札板の高さで決まります。上置型仏壇の場合は、札丈4寸か4.5寸、台付型仏壇の場合は、札丈4.5寸か5寸の位牌を安置することが一般的です。
夫婦の位牌は同じくらいにする
夫婦の位牌は、同じ大きさのものを選びましょう。位牌は本来1人ずつつくるものですが、夫婦の場合は、1つの位牌に2人の戒名を連ねて入れることもあります。
夫婦連名の戒名は、夫の戒名を向かって右側に、妻の戒名を左側に入れます。裏側の俗名も、夫の俗名を向かって右側に、妻の俗名を左側に入れることが一般的です。
夫婦連名を希望する場合でも、最初から片側を空けた位牌をつくることはそう多くありません。夫もしくは妻の一方が亡くなった場合、まずは1人の位牌をつくり、次にご不幸があったときに夫婦連名の位牌につくり変えます。
先祖の位牌とのバランスを考慮する
すでに位牌がある場合は、先祖の位牌と同じ大きさか、少し小さい位牌を選ぶのが一般的です。
ただし、大きな功績や足跡を残した人であれば、ご先祖様の位牌より大きくすることもあります。位牌の大きさは、その家の方々が「どの故人を中心に考えるか」によって異なってきます。
ご本尊より位牌は小さくする
位牌を選ぶときは、仏壇に安置するご本尊の高さより小さい位牌を選びましょう。
座像でも立像でも、ご本尊が仏像の場合は、仏像光背先の総高より小さい位牌にします。ご本尊が掛軸の場合は、掛軸表具の総高より小さくします。
分家の場合は「位牌分け」となる
現代では、分家でも位牌をつくることがあります。兄弟の数だけ位牌をつくれば、それだけ故人を供養する想いも深まることになります。
昔の家長制度のもとでは、先祖の位牌は長男がお守りするというのが慣わしでした。しかし、個人の気持ちを大切にする現代では、次男でも三男でも両親の位牌をつくることが可能です。これを「位牌分け」といいます。
また、まだ身内に不幸のない次男三男の家庭でも、自分のすべてのご先祖様に感謝供養するという意味を込めて、「○○家先祖代々之霊位」という位牌をつくる場合があります。
置く場所が心配なら「回出位牌」も検討する
先祖の位牌が増えて仏壇に納めることが難しくなったときは、回出位牌(くりだしいはい)につくり変えましょう。回出位牌には戒名を記す板が十枚ほど納められているので、位牌を安置するスペースが限られているときにおすすめです。
ご先祖様のすべての位牌をまとめる意味で、「○○家先祖代々之霊位」という位牌をつくることもできます。先祖位牌は、個人の位牌よりも大きくつくることが主流で、故人の情報は過去帳にまとめるのが一般的です。
他にもいろいろな方法がありますので、位牌の安置についてお悩みの場合は、お気軽に仏壇店で相談してみてくださいね。
浄土真宗は位牌の代わりに法名軸や過去帳を用いる
浄土真宗では、原則として位牌を使用しません。
そもそも位牌は、故人の霊魂が宿る依代(よりしろ)としての役割をもちます。多くの仏教宗派では、位牌に手を合わせることで、ご先祖様や故人を供養できると考えられています。
一方で浄土真宗には、亡くなった方の霊魂がこの世にとどまるという考え方はありません。「浄土門の念仏を唱えることで阿弥陀如来様により極楽浄土へ導かれる」という宗旨なので、位牌を用いる必要がないのです。
浄土真宗では、故人の法名や俗名、没年月日などを記載した「過去帳」や「法名軸」を位牌の代わりに使用します。法名軸は仏壇の内側の両側面に掛けます。過去帳は「見台(けんだい)」と呼ばれる台にのせて、仏壇の中に安置します。
法名軸
法名軸とは、金襴や緞子などでできた掛軸の中央に白無地の紙を表装したもので、四十九日までに法名を書き写してもらいます。菩提寺の住職に用意してもらうか、仏壇店で購入して用意します。
過去帳
過去帳とは、亡くなられた方の戒名(法名)、没年月日、俗名、行年(享年)などを、命日の日付のページに記帳するもので、月命日の日に開いてお参りします。コンパクトな仏壇で法名軸を掛けることのできないときに、過去帳で代用することもあります。
※ただし実際は、浄土真宗の家でも他の宗派と同じように位牌がまつられている場合も場合も多いです。浄土真宗の位牌は故人の記録としての意味合いが強くなります。
位牌の構造と部分名称
位牌は、札板に戒名の文字を入れなくてはならないので、札板と台座が外せる構造になっています。サイズは小さいですが、多くの部品を使った複雑な構造となっています。
位牌を構成する部品の名称は、次のとおりです。
札板(ふだいた)
戒名の文字を記すための板で、台座に挿して全体を組み立てている。
受花(うけばな)
札板のすぐ下にあり、上を向いて開いた連弁の形をした部分。
上花(うわばな)
茄子座の上にある花の形をした部分。
茄子座(なすざ)
上花と返り花の間にある小さい台の部分。
返り花(かえりばな)
茄子座を支える花の形をした部分。
框(かまち)
一番下の脚の部分。
年数が経つと、どうしても札板と台座にゆるみが出て動くようになりますが、心配はいりません。台座を外してクサビを入れれば、簡単に直せます。
位牌のゆるみは一般の人でも直せますが、ご自身で修理することに抵抗がある場合は、仏壇店に持参すればすぐに修理してもらえます。購入した店舗以外でも対応してもらえる可能性があるので、お近くの仏壇店に相談してみましょう。
故人を思い浮かべながら位牌選びを
位牌には、宗派や年齢性別による決まりはありません。ただし、正しくサイズを選ぶ必要があったり宗派によっては位牌が不要だったりと細かいルールがあるため、今回紹介した選び方のポイントはしっかりと押さえておきましょう。
故人を思い浮かべながらその方らしい位牌を選ぶ時間は、故人や思い出と向き合う意味のある時間になってくれます。現在はさまざまなデザインの位牌が用意されているので、ぜひ故人のお人柄や好みに合った位牌を選んでみてくださいね。
東京浅草の仏壇屋 滝田商店では、さまざまなデザインの位牌を豊富に取り扱っております。ご希望や予算に沿った位牌のご提案も承っておりますので、お気軽にご相談ください。
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