四十九日と法事

● 初七日の法要…

亡くなった人の追善供養をする法要を行うことを「法事」といいます。
葬儀を終えてからの法要は、亡くなった日を入れて七日目ごとに営みます。なかでも初七日(しょなのか)、三十五日、四十九日は特に重要とされています。
初七日は実際の骨上げから二、三日後ということになるので、遠方の方に何度も来ていただくのは大変なため、最近では葬儀の日に遺骨迎えの法要とあわせて行うこともあります。

● 四十九日まで…

昔から人が死ぬことを「往生(おうじょう)」といいます。
往生は「()きて生まれる」という意味で、亡くなった時から死出の旅が始まり、四十九日後に他の世界に往って生まれ変わるという言い伝えにもとづいています。
故人が亡くなった日から数えて四十九日の間を中陰(ちゅういん)中有(ちゅうう))といいます。
これは現世と来世の中間という意味で、死から新しい生へと生まれ変わるのに必要な期間で、四十九日目を満中陰といいます。
仏教では、死者が冥土に行くと、七日目ごとに閻魔大王を筆頭にした十王によって、生前の善行、悪行を問われ、審判が行われると考えられています。
また、この審判の日に遺族が供養することにより、そこで積まれた善業(ぜんごう)が故人にも及ぶと教えています。
亡くなった人のために善業(ぜんごう)を積み重ねることを追善といい、故人ができるだけ善い世界に生まれ変われるようにとの親族の素朴な願いから、葬儀のあと七日ごとに追善供養をするようになりました。
最初が初七日(しょなのか)で、この日に故人が三途(さんず)の川の(ほとり)に到着するといわれます。
川の流れは激流と急流、緩流の三種類あるため、緩流を渡れるようにとの願いを込めて営む法事です。
その後、二七日(ふたなのか)(十四日目)、三七日(みなのか)(二十一日目)、四七日(よなのか)(二十八日目)、五七日(いつなのか)(三十五日目)、六七日(むなのか)(四十二日目)、七七日(なななのか)(四十九日目)と続きます。
この間が忌中(きちゅう)で、閻魔大王の裁きを受けるという三十五日と次に生まれ変わる世界が決定するという四十九日には、いつも以上に心をこめて冥福を祈ります。

● 四十九日の法要…

四十九日は、遺族、近親者、知人が集まり、忌明けの法要を行います。
日取りは皆が出席しやすい、直前の土・日曜日に行うことが多いようです。
菩提寺のご住職に読経をお願いして供養を営み、式が終わったら参列者を接待し、食事のあと引き出物をわたします。
この日に納骨を行うことも多く、法要のあと墓地に行き、ご住職の立ち会いのもとで納骨式を行います。
このあと忌明けの挨拶状を出したり、必要に応じて香典返しを送ります。

● 白木の位牌…

白木の位牌は、葬儀の際に用いる野辺送り用の仮の位牌です。
四十九日の法要までは、遺骨、遺影と一緒にあと飾りの祭壇にまつりますが、四十九日までに仏壇屋に依頼し、漆塗りの本位牌に作り替えなくてはなりません。 仏壇屋では戒名を入れるのに2週間位かかりますので、早めに依頼して下さい。
法要がすむと本位牌を仏壇に安置しますので、仏壇がない場合は法要までに一緒に用意します。
白木の位牌は、四十九日の法要の時に菩提寺にお納めし、新しく作った本位牌はご住職に魂入れをしていただきます。
新しい仏壇を購入されたら、ご住職に来ていただき魂入れ(開眼供養・入仏式)の読経をお願いするのが習わしですが、四十九日の法要の時にご本尊と本位牌を持参して、魂入れをしていただくことも多いです。

● 百か日の法要…

百か日は、出苦忌ともいい、娑婆のすべてのことから抜け出して、無の世界に入ることを示します。また卒哭忌ともいわれ、故人への悲しみのために泣き暮らしていたのを泣きやむ日を意味するものです。

● 命日供養…

毎月めぐってくる故人の亡くなった日を命日と呼んでいます。命日には、仏壇に供物や花、生前好きだったものを供えます。
また亡くなったその月の命日を祥月命日といいます。

● 塔婆供養…

塔婆は卒塔婆ともいい、梵語で塔を意味し五輪塔が刻まれております。
五輪とは、仏教の宇宙観の五大要素「空風火水地」を示しており、塔婆供養を行うことは、故人の霊が宇宙と同化し仏に成ることを意味しています。
浄土真宗では塔婆はもちいませんが、法事やお盆などに菩提寺に塔婆供養をお願いすることは、なによりも大切なことです。

● 年忌法要…

亡くなった翌年の祥月命日を一周忌といい法要を営みます。
一周忌のあとは、満二年目の三回忌(一周忌以降は死去した年も入れて数える)、七回忌、十三回忌、十七回忌、二十三回忌、二十七回忌、三十三回忌、五十回忌に法要を営みます。
年忌法要は、命日に行うものですが、最近は皆が出席しやすい土・日曜日に行うことが多いようです。その場合は、必ず命日より前にするのが習わしです。
また同じ年に重なる年忌法要を、一度にまとめて行うこともあります。

● 令和六年 年回表
年忌死去年
一周忌令和五年
三回忌令和四年
七回忌平成三十年
十三回忌平成二十四年
十七回忌平成二十年
二十三回忌平成十四年
二十七回忌平成十年
三十三回忌平成四年
五十回忌昭和五十年
● お布施…

お布施というと、普通、お寺さんに出す謝礼と思われがちです。
しかし、仏教でいう布施とは、自分の持てるものを、できるだけ他人に施しすることなのです。
その意味の布施には、法施、無畏施、財施の三種類があります。
法施は仏法を説いて人に施す。無畏施は人の心配事や苦労事を取り除いてあげる。
財施が、金銭物品等をもって施すことです。「仏の教え」をいただいたことへの感謝の心で捧げるものです。
祈祷、祈願をお願いしたり、法事や葬儀のお寺へのお礼も、すべてお布施となります。
よく、お布施はどれくらい包んだらよいか、と聞く人がありますが、定まった額はありません。
自分の持てるものを最大限つくして施すということなので、その人の社会的地位とか資産に応じて違いがあるのは当然なのです。
しかし、実際に法事や葬式をつとめた場合は、どれくらい包むものか戸惑うことになります。どうしても分からないときは、お寺にくわしい檀家の人かお寺に直接相談したらよいでしょう。

● 法事での挨拶例…

施主側は、はじめに

「本日は、皆様お忙しい中を亡き夫(妻)の一周忌にお越しいただきまして、ありがとうございます。
早いもので、夫(妻)が亡くなりまして一年の月日が流れました。
当初はただ呆然とするばかりでしたが、残された者としてしっかりしなければと、ようやく元気を取り戻してまいりました。
これも、皆様方のお力添えのおかげと感謝いたしております。
ささやかではございますが、お食事をご用意いたしました。ごゆっくりご歓談くださいますようお願い申し上げます。
また、故人の思い出話などもお聞かせいただければ幸いでございます。
本日はありがとうございました。」

終わりに

「まだまだ皆様のお話をお聞きしたいと存じますが、そろそろお時間となりましたので、これにてお開きにしたいと存じます。
夫(妻)がいなくなって寂しくなりましたが、残りました家族一同助け合ってやっていきたいと存じます。
どうか今後も、変わらぬお付き合いをお願い申し上げます。
本日はありがとうございました。」

などと挨拶します。

招かれた側は、

「ご法要の席にお招きいただきまして恐れ入ります。ごいっしょにご供養させていただきます。」

とか、

「本日はお招きにあずかり恐縮です。」

などと挨拶し、「ありがとう」という挨拶は避けるようにします。

● 法事と法要…

法事とは、もともとすべての仏法行事をさしていたようですが、今日では一周忌、三回忌など亡くなった人の追善供養をする法要を行うことを法事といっています。
法要とは、仏を供養するという意味の仏教用語です。
仏教以外にも法要と似た習慣があり、神道では霊祭、キリスト教では追悼ミサあるいは記念式といいます。
法事は故人を偲びながら冥福を祈り、その霊を慰めるために営みます。つまり故人があの世でよい報いを受けてもらうために、この世に残された者が仏の供養をするのです。 また一方で、法事は生きている私たちが、仏様の前で、故人への感謝の心を大切にして、生きる覚悟を新たにする場でもあります。

● お寺と檀家…

菩提寺は、旦那寺ともいいます。お寺の墓地に先祖代々の墓があり、葬儀や先祖の供養をお願いする寺のことで、このような関係にある人を檀家、檀徒といいます。
浄土真宗では門徒という呼び方を使っています。
お寺の90%以上は檀家寺ですが、檀徒がなく信徒だけのお寺もあります。
このようなお寺は祈祷、祈願を専門にするお寺で、厄除け、交通安全、商売繁盛などの祈祷を行ない全国的に信者をもつお寺もあります。
檀家寺と檀家の関係が生まれたのは、江戸時代のはじめからです。キリシタン禁制によって寺檀制という制度が生まれ、お寺は農村の戸籍係のような役目を果たすようになりました。その時からの関係がいまもなお生きているのです。

● 忌服の期間…

近親者が亡くなったとき、一定期間喪に服することを忌服といいます。
古くは身内の死はけがれとして、日常の行為をつつしむものとされてました。
一般には仏教の忌日の考え方に従って四十九日までを忌中、一周忌までを喪中としています。
忌中の期間には結婚式などのおめでたい席への出席や、神社への参拝などはひかえたほうがよいとされています。
喪中に迎えた正月は、年賀状、年始挨拶、正月飾り、初詣でなどの正月行事は控えます。

● 仏教の年中行事
行事備考
1月1日〜7日修正会
(初詣で)
 
2月3日節分会 
2月15日涅槃会お釈迦さまの
亡くなった日
3月春分前後
7日間※
彼岸会 
4月8日灌仏会
(花祭り)
お釈迦さまの
誕生日
7月15日お盆
(盂蘭盆会)
 
8月15日旧盆
(盂蘭盆会)
 
9月秋分前後
7日間※
彼岸会 
12月8日成道会お釈迦さまが
悟りを開かれた日
その他報恩講、
報恩お会式
各宗の宗祖の忌日
その他施餓鬼会 

※ 春分の日(秋分の日)をはさんだ前後3日間ずつ、計7日間。

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● 仏教の主な宗派

宗派名をクリックすると、詳しい説明がご覧になれます。

宗派ご本尊総本山開祖・宗祖
天台宗 阿弥陀如来 比叡山
延暦寺
(滋賀県)
伝教大師
最澄
真言宗 大日如来 高野山
金剛峰寺
(和歌山県)
弘法大師
空海
浄土宗 阿弥陀如来 知恩院
(京都府)
法然上人
真宗
大谷派
東阿弥陀如来 東本願寺
(京都府)
親鸞聖人
浄土真宗
本願寺派
西阿弥陀如来 西本願寺
(京都府)
時宗 阿弥陀如来 藤沢 
遊行寺
(神奈川県)
一遍上人
臨済宗 釈迦如来 --- 栄西禅師
曹洞宗 永平寺
(福井県)
道元禅師
総持寺
(神奈川県)
瑩山禅師
日蓮宗 大曼荼羅 身延山
久遠寺
(山梨県)
日蓮聖人

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● 仏教…

仏教は世界三大宗教の一つで、今から約2,500年前、釈迦によって広められました。
釈迦、すなわち仏陀(ブッダ)の教えと言う意味で、さらにこれに基づいて、後世新しく展開された教説を含めて広く仏教と言われています。
仏教の本質は、「すべての悪をなさず、善を行い、みずからの心を清める。」これが諸仏の教えです。
仏陀の意味は、覚者つまり真理を悟り、人格を高めるという意味で、直接的には釈迦をさしていますが、人だれもが悟れば仏陀になりうるわけです。
仏陀となる教えは、みずから真理に目覚める「悟り」、真理に目覚めた者によって目覚めさせられる「救い」を究極の境地と認めました。
中国の仏教は、372年朝鮮半島の高句麗に、ついで384年南部の百済に伝えられました。
日本への初伝は538年で、聖徳太子の三宝興隆の詔によって天下に流通しました。
「十七条憲法」を制定し、法隆寺、四天王寺などを建立した聖徳太子によって、日本仏教の基礎は確立し、大化改新後、ますますさかんとなりました。
平安時代には、最澄が比叡山に天台宗を開創し、空海は高野山に真言宗を、そして中世には新しい仏教運動がおこり、古代仏教がたんなる輸入仏教であったのに対し、主体の理解の上に立った新しい仏教が展開されてゆきました。

● 仏道(四諦八正道)…

お釈迦さまが若き青年時代に強く感じたことは、「無常」であったと言われています。
人は何故生まれ、何故老い、何故病み、そして死ぬのか。
こうした現象が、同じ姿でくり返するかと苦悶され、この真理探究のため出家し、苦修の末、生老死が因縁であることを悟られたのです。
お釈迦さまはこの世の一切が苦であり(苦諦)、「無明」こそが苦の原因である(集諦)、したがって無明がなくなれば苦はすべて消滅する(滅諦)、そのためにはどうすればよいか(道諦)ということを悟られたのです。
そして苦の原因を絶つために八つの正しい道(八正道)を実践しなさいと説かれています。

それは、

  1. 正見(正しい見方)
  2. 正思(正しい考え方)
  3. 正語(正しい言葉)
  4. 正業(正しい行い)
  5. 正命(正しい生活)
  6. 正精進(正しい努力)
  7. 正念(正しい意識)
  8. 正定(正しい精神の安定)

の八つです。

このお釈迦さまが悟られた真理は、四諦八正道といわれています。

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